北海道大学 大学院 生命科学院
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「頭を冷やす神経」がゴキブリにもあった! —巨大神経が記憶中枢の興奮状態を調節—

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「頭を冷やして出直してこい」と言われた経験は誰にでもあるのではないでしょうか。沢山の感覚情報を処理したり、いろいろなことを考えすぎて煮詰まると,脳は疲れてしまいます。この興奮した脳を“冷ます(沈静化する)”働きをするのが,機能性食品でも知られるギャバ(GABA)を伝達物質としてもつ抑制性ニューロンです。我々の大脳皮質では比較的少数のニューロンが活動することで,エネルギー効率のよい情報処理をしていることが知られています。この処理はスパース符号化(sparse coding)と呼ばれ,神経科学や情報理論における重要課題の一つです。
生命科学院博士課程2年生の高橋 直美氏,電子科学研究所の西野 浩史助教、理学研究院の水波 誠教授らの研究チームと福岡大学理学部の渡邉 英博助教は共同で,昆虫(ワモンゴキブリ)の記憶中枢であるキノコ体においてスパース符号化に中心的な働きをする4つの抑制性ニューロンの完全同定に成功しました。これらのニューロンは脳の片半球を占めるほど巨大なもので、少しずつ異なる形態をしていました(写真は染色された2つのニューロン)。ゴキブリならではの“しぶとさ”をもつこれらのニューロンからは長時間の活動モニタリングが容易というメリットがあります。スパース符号化,同期発火のよい実験モデルを提供するとともに,情報選別,学習,睡眠など様々な生理機能における抑制性ニューロンの具体的な役割が明らかになることが期待されます。

(研究論文)

研究論文名:Complete identification of four giant interneurons supplying mushroom body  calyces in the cockroach Periplaneta americana (ゴキブリの記憶中枢を支配する4 つの巨大抑制性ニューロンの完全同定)

著者:高橋直美1,加藤 巧1,渡邉英博2,中山雄太1,岩﨑正純3,水波 誠4,西野浩史3(1 北海道大学大学院生命科学院,2 福岡大学理学部地球圏科学科,3 北海道大学電子科学研究所,4 北海道大学大学院理学研究院)

公表雑誌:Journal of Comparative Neurology(神経科学の専門誌)

公表日:米国東部時間 2016 年9 月27 日(火) (オンライン公開)

2016/10/03 プレスリリース ダウンロード

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