北海道大学 大学院 生命科学院
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ヒトと魚は異なるホルモンに応答する ~ミネラルコルチコイド受容体の分子進化の解明~

北海道大学大学院理学研究院の勝 義直教授,カリフォルニア大学サンディエゴ校のMichael E.Baker 博士らの国際共同研究グループは,哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,魚類それぞれについて,体液の浸透圧調節に重要な役割を果たすミネラルコルチコイド受容体が種ごとにどのホルモンに応答(ホルモン応答の種特異性)し,どのリガンドと結びつくか(リガンド特異性)を詳細に解析し,ヒトと魚のミネラルコルチコイド受容体がそれぞれ異なるホルモンに応答することを解明しました。

ミネラルコルチコイド受容体は,ヒトではアルドステロンというステロイドホルモンを受容し,腎臓においてナトリウムの再吸収促進,カリウムの再吸収抑制,リン酸の排泄などを促すことにより,体液の浸透圧調節に深く関わっています。しかし,生物進化の過程でホルモン応答性や生体内機能がどのように変化してきたのかなど,不明な点が多く残されています。

今回の研究では,様々な生物種のミネラルコルチコイド受容体を用いて,ホルモン応答の種特異性,リガンド特異性を調べました。その結果,魚類(ゼブラフィッシュ)のミネラルコルチコイド受容体は哺乳類(ヒト)のミネラルコルチコイド受容体とは異なり,黄体ホルモンであるプロゲステロンやヒトのミネラルコルチコイド受容体のアンタゴニストであるスピロノラクトンに応答して転写活性を高めることが判明しました。

魚類のミネラルコルチコイド受容体が示すホルモン応答性は,両生類のミネラルコルチコイド受容体では認められなかったことから,本成果は,四肢動物への進化の際にホルモン応答性が劇的に変化したことを物語っています。これらの成果は,ミネラルコルチコイド受容体の分子進化を解明する上で重要な知見を提供します。

なお,本研究成果は,米国東部時間2018 年7 月3 日(火)公開のScience Signaling 誌に掲載されました。

(研究論文)

論文名 Evolution of human, chicken, alligator, frog, and zebrafish mineralocorticoid receptors:Allosteric influence on steroid specificity(ヒト,ニワトリ,ワニ,カエル,ゼブラフィシュのミネラルコルチコイド受容体の進化:ステロイド選択性に対するアロステリック影響)
著者名 勝 義直1,岡 香織2,Michael E. Baker3(1 北海道大学大学院理学研究院,2 北海道大学大学院生命科学院,現:熊本大学大学院生命科学研究部,3 カリフォルニア大学サンディエゴ校)
雑誌名 Science Signaling(アメリカ科学振興協会が発行するScience の姉妹誌)
DOI 10.1126/scisignal.aao1520
公表日 米国東部時間2018 年7 月3 日(火)(オンライン公開)

2018/7/4 プレスリリース ダウンロード

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