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シロイヌナズナ
アブラナ科の1年生植物であるシロイヌナズナは、植物体が小さく、また世代時間が短いことなどから、遺伝学的研究材料として20世紀初頭から使われています。その後シロイヌナズナのゲノムサイズが非常に小さいことが分かり、分子生物学的研究のためのモデル材料として重要な植物になっています。高等植物として最初のゲノム解析の材料に選定され、既にその全ゲノム配列が明らかになっています。
メチオニン生合成
メチオニンはタンパク質の構成成分となるのみならず、S-アデノシルメチオニン(SAM)に代謝されて細胞内のほとんどのメチル化反応に使われるなど、重要なアミノ酸です。細胞内のメチオニンやSAMの濃度は厳密に制御されています。生合成経路のフィードバック制御機構としては、アロステリック酵素による制御がよく知られていますが、メチオニン生合成の鍵段階を触媒するシスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)はアロステリック酵素ではなく、メチオニン生合成の制御機構は20年来の謎でした。
CGS mRNA分解の自己制御
我々は、シロイヌナズナを用いてメチオニンを過剰に蓄積する変異株を分離しました。この変異株を用いた研究により、CGSの活性はCGSをコードするmRNAの分解段階で制御されており、しかもこの制御にCGS自身のポリペプチドが関与していることが分かりました。これまでの研究で、SAM存在下でCGS mRNAが翻訳されると、特定の位置で翻訳が一時停止し、この翻訳停止が引き金となってCGS mRNAの分解が誘導されることが分かってきました。SAMによる翻訳停止からmRNA分解に至る過程の分子機構の解明が今後の研究課題です。 |