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パネト細胞による自然免疫および再生の制御
小腸は食品からの栄養を吸収する場であると同時に、外界と接する場であるため、生体防御の最前線でもある。自然免疫は生体防御を最初に担う機構であり、その主要な作用因子である抗菌ペプチドは幅広い抗微生物スペクトラムを有し、かつ強い殺微生物活性を有する。小腸上皮において、陰窩の基底部に存在するパネト細胞 (Paneth cell) が、細菌刺激やコリン作動性刺激になどに反応して、抗菌ペプチドであるαディフェンシンを分泌し、感染防御に貢献していることが知られている。また、小腸の上皮細胞は3~4日周期で再生を繰り返すことが知られている。その再生機構において中心的役割を果たすのが、幹細胞とパネト細胞が形成する微小環境(幹細胞ニッチ)であることが示唆されている。特にパネト細胞は幹細胞の維持に重要な役割を果たすことが報告されているが、詳細な機構は解明されていない。これらのことから、パネト細胞と細菌などの微生物との接触や、パネト細胞と幹細胞との相互作用は自然免疫や腸管組織の維持、すなわち腸内環境のホメオスタシスに重要な意味を持つと考えられる。しかし、未だにその相互作用を担うパネト細胞の細胞膜表面上の分子や、分泌タンパク質についてはほとんど解明されていない。そこで私たちは、パネト細胞の細胞膜および分泌タンパク質を選択的に解析することにより、パネト細胞を介した自然免疫や腸管の再生における制御機構を解明しようとしている。 |