Photo 生命システム科学コース
生殖発生生物学第3研究室
(清水隆研究室)

教授

清水 隆
(しみず たかし)

研究タイトル
環形動物の発生生物学
研究キーワード
Determinate cleavage、Determinants、Embryonic stem cells、Teloblast、Segmentation、Lophotrochozoa、Spiralia、Annelida、Oligochaeta
担当科目
生命科学実習/生命科学論文講読/生命システム科学基礎論/生殖発生機構学特論
所在
理学部・5号館・1009室
電話番号
011-706-4460
E-Mail
ホームページ
http://www.sci.hokudai.ac.jp/~stak/seitai4/Welcome.html



研究内容
  環形動物貧毛類イトミミズ(Tubifex tubifex) 胚を材料にして、規則的な節構造(体節)を備えた細長い個体が丸い一個の卵からできてくる全発生過程を明らかにすることを目指している。私達が特に注目しているのは、胚発生の「オーガナイザー」として機能する端細胞(teloblast)のもつ目覚ましい発生能と端細胞から由来する体節形成細胞の自律分化能である。私達は端細胞「決定」の分子的基盤を明らかにするとともに、イトミミズ胚発生の4つの大きな柱である、不等卵割、中胚葉形成、背腹軸形成、および体節形成(分節化)のメカニズムを解明したいと考えている。

(1) 端細胞決定因子の同定と割球への分配機構の解析
これまでの一連の研究から、端細胞のもつ胚帯形成能が端細胞に特異的に隔離される母性因子によってもたらされることが示されている。端細胞「決定」にかかわる分子を明らかにするとともに、初期発生過程での割球への分配機構を解析する。

(2) 中胚葉決定因子の同定と中胚葉形成機構の解析
端細胞前駆細胞および中胚葉性端細胞(mesodermal teloblast)に存在するpolyA+RNAを出発材料にして、端細胞特異的分子を単離する。更にRNAi法を組み込んだ機能解析により中胚葉決定因子を同定し、中胚葉特異的遺伝子の発現に至る経路を明らかにする。

(3)環形動物「体節形成遺伝子」の同定
イトミミズの体節形成過程はショウジョウバエと大きく異なる。そこで、私達は2つのアプローチをとる。ショウジョウバエで明らかにされた体節形成遺伝子のホモログをイトミミズで追試する一方で、胚帯が分節化する過程で特異的に発現する(環形動物独自の)遺伝子を探索する。

(4) 体節の個性化機構の解析
イトミミズの体を構成する体節は全て相同(homologous)であるが、各体節はそれぞれ特徴(個性 identity)のある構造を示す。体節形成細胞は中胚葉性端細胞から生み出される時点で既にidentityを獲得している。体節形成細胞のidentity獲得の仕組みをHox遺伝子の発現の観点から解析する。

(5) 背腹軸確立機構の解析
イトミミズ胚の背腹の極性は早くも端細胞の段階で確立されている。これに先立ち、特別な細胞質(pole plasm)が割球の背側に局在することも知られている。背腹軸確立にかかわる遺伝子の探索・同定を行い、その発現パターンと端細胞/胚帯の極性の因果関係を解析する。

(6) 不等卵割機構の解析
イトミミズ胚の初期卵割は、端細胞の分裂も含めて、大きさの異なる娘細胞を生ずる不等分裂の連続である。この不等分裂は、分裂装置が細胞表層に存在する因子と相互作用し、割球内で偏在することによってもたらされる。割球に局在するこの細胞表層因子(分子)とその遺伝子の同定を行う。
メッセージ
"That a single cell can carry the total heritage of the complex adult, that it can in the course of a few days or weeks give rise to a mollusc or a man, is one of the great marvels of nature" (E. B. Wilson, 1925) いつの時代も見る者を魅了して止まない動物の胚発生。Wilsonと同じ思いを抱く人たちをお待ちしています。

閉じる