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高等植物は太陽光エネルギーを光合成で化学エネルギーに変換することで、栄養成長や生殖成長を行っています。そのため、個体全体での光合成活性を高く保ち続けることは非常に重要です。一方、葉には寿命があって、時間経過に伴って光合成活性は徐々に低下していきます。また、環境ストレス下では光合成に伴って活性酸素の生成量が増えるため、葉の光合成活性が低下します。このような場合に植物は、古い、傷んだ葉を分解して養分を新しい葉に転流し、個体全体での光合成能力を上昇させることで、個体全体での適応度を増大させています。
その際に重要な役割を担うのが、クロロフィル代謝系です。高等植物では光エネルギーの捕集にクロロフィルaとbを用いていて、その量比の調節は合成系と分解系のバランスにより厳密に行われていると考えられています。実際、クロロフィル代謝系の変異株では葉の老化が早まったり遅れたりすることからも、転流や老化においてクロロフィル代謝調節が重要である事がわかります。
また、クロロフィル代謝経路は光合成生物の進化や生育環境を反映しているため、この経路を調べる事で光合成の進化や環境適応機構が見えてきます。
そこで当研究グループでは、シロイヌナズナの変異株を用いたクロロフィル代謝研究を基軸として、光合成の環境適応機構や進化について研究しています。また最近では、nanoLC-ESI-MS/MSを利用したプロテオーム解析やバイオインフォマティクスを用いた遺伝子機能推定を研究に積極的に取り入れており、今後の発展が期待しています。 |