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すべての細胞は非対称な構造をしており、これは細胞の極性と呼ばれています。がん細胞では細胞極性が異常になっており、病態の点からも重要な細胞機能ですが、まだまだ解らないことが多く残されています。細胞の極性形成の基本メカニズムは、細胞内のある特定の場所に一群の蛋白質や脂質、mRNA等を輸送し、維持することにあります。複雑な様相を呈する神経細胞や上皮細胞の細胞極性も、基本的にはこのメカニズムの積み重ねによって形成されます。基本形とは言っても、膜蛋白質、細胞骨格系、小胞輸送系等がシグナル伝達機構によって巧妙に制御されており、そこには何十種類もの蛋白質が関与しています。この細胞極性形成の基本形は酵母のようなモデル細胞でも保存されており、酵母を用いてヒト細胞にまで保存されているような極性形成の基本メカニズムを学ぶことが可能です。私達の細胞極性の研究過程で、細胞膜やゴルジ体の膜脂質の動態が細胞極性形成に重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。真核細胞では、細胞膜の外側と内側で脂質組成が異なることが知られており、膜脂質の非対称性と呼ばれています。この脂質非対称性を制御すると考えられている遺伝子に変異が入ると、細胞の極性形成や細胞内小胞の形成過程が異常になることが解ってきました。現在は、このように膜脂質の動態が、細胞極性をはじめとした細胞機能をどのように制御しているのかに焦点を当てて解析しています。 |