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概要:卵や精子を作り、それらを合体させることは、有性生殖を営む生物にとって、個体の限られた寿命を越え、種を存続させるために必須の過程で、かつ、生命に多様性を与える過程です。当研究室では主に魚類・両生類を材料に、卵成熟と精子形成を制御する仕組み、並びに雑種の形成を防ぎ種を維持する仕組み(生殖隔離機構)を分子・細胞レベルで解析しています。
卵成熟促進因子 (MPF) の形成、活性化、作用の分子機構:MPFは2種の蛋白質 (Cdc2とサイクリンB) の複合体で、卵成熟 (減数分裂) のみならず、体細胞分裂の調節にも関わる全真核生物に共通の因子です。本研究室では分子細胞生物学的手法を用いて、卵表でのMIH刺激の受容と卵細胞質への伝達、翻訳抑制状態の(マスクされた)サイクリンB mRNAの翻訳開始、MPFの形成と活性化、MPFの作用による卵成熟誘起の仕組みを解析しています。
細胞培養系を用いた精子形成の制御機構の解析:精子形成がどのように制御されているかを調べる目的で、メダカ精巣から精母細胞を取り出し、試験管内で培養して精子を作らせる方法を開発しました。この細胞培養系を駆使し、精子形成の制御機構を分子レベルで調べています。また試験管内で作製した精子に遺伝子を導入し、これで受精させることで、簡便で効率的なトランスジェニック生物作製技術の開発をめざしています。
メダカ属における生殖隔離の分子細胞機構:異種間で交雑が起きない仕組み(生殖隔離機構)は種の維持に必須です。様々な分化程度を示す亜種や種が存在するメダカ属は、雑種の発生異常や不妊により種間交雑を阻止する機構の分子細胞基盤を探る絶好の実験系を提供します。本研究室では雑種の発生異常と不妊の原因を細胞レベルや分子レベルで特定することで、生殖隔離を保障する仕組みを明らかにすることをめざしています。
減数分裂を特徴づける染色体分離を保証する分子機構:減数分裂は有性生殖を可能にする半数体の配偶子を作るために必須の分裂様式です。減数分裂に特異的な染色体の挙動が、どのような分子機構で制御されているかを探るため、相同染色体や姉妹染色分体の結合に関わる蛋白質(コヒーシン、シナプトネマ構成蛋白質、セントロメア構成蛋白質等)の挙動を、主にメダカを用いて調べています。 |