
研究室紹介

細胞高次機能科学分野
形態,極性,接着、分化といった多くの細胞機能が,複雑なシグナル伝達ネットワーク制御のもとで
受容体を含む膜タンパク質系やシグナル伝達系、細胞骨格系,細胞内小胞輸送系の働きによって支えられています。
細胞やその集合体としての組織の挙動を理解するためには,個々の分子機能の理解に加え
それらがシステムとしてどのように動的に変化し、維持されているかという視点が重要です。
本分野では,これらの問題について、植物,モデル生物,動物を題材にして
分子遺伝学,細胞生物学,生理学及び生化学的視点から統合的に学びます。
細胞を構成する基本単位である生体膜は、細胞の形態や極性、小胞輸送、オルガネラの機能等に必須な役割を果たしている。脂質二重層から成る生体膜には、様々な脂質が存在すること、また、脂質の分布には二重層間で非対称性が見られることから、脂質は生体膜の機能発現に重要な役割を果たしていると考えられるが、膜の特殊な物性と脂質が低分子であることから解析が難しく、未解明な点が多い。当研究室では、モデル生物である酵母を用いて、脂質の非対称性や分布の変化が様々な細胞機能に果たす役割を解明する。
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田中一馬教授 |
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岸本拓磨助教 |
研究キーワード |
脂質非対称性、細胞極性、細胞内小胞輸送、分子細胞生物学、分子遺伝学、酵母 |
植物は静物といわれるように動かない生き物の代表と考えられていますが,それは私達の時間感覚では感じられないだけで、記録映像を早回しで見てみると、非常にダイナミックに動いたり,芽や花など新しい器官を次々と作り出していきます。このような形作りは形態形成と呼ばれ,植物ホルモンであるオーキシンが中心的な役割を担っています。当研究室ではシロイヌナズナの突然変異体や形質転換植物を使って,オーキシン応答性遺伝子の発現メカニズムを明らかにしています。
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綿引雅昭 准教授 |
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研究キーワード |
オーキシン,フィードバック制御,遺伝子発現,分子生物学,植物生理学,遺伝学,植物,アラビドプシス,ニンジン,ジャガイモ |
多細胞高等動物の細胞は様々なシグナルに応答して増殖・分化・細胞死(アポトーシス)、どの方向へ向かうか調節する機構をもっている。発癌物質など環境中の様々なストレス因子、さらにストレス因子が誘引する活性酸素種は、この機構に不調異常をもたらし、細胞は過剰な増殖・死に陥って、個体に癌や脳神経変性疾患等の様々な病気を引き起こす。細胞の有する環境ストレス応答システムと個体レベルでの癌・その他の疾患との関係を、原癌遺伝子産物タンパク質の機能解析を中心に分子レベルで解析している。
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有賀早苗特任教授 |
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研究キーワード |
細胞増殖・分化・癌化・アポトーシス、生化学、分子生物学、細胞生物学、高等動物、原癌遺伝子、酸化ストレス、神経変性疾患、シグナル応答 |

環境応答統御科学分野
生物は、厳しい環境の変化に対して細胞・組織・器官内の環境を変化させ、最終的には生物の形さえもが変化します。
本分野では、このような生物の内外環境応答機能を個体統合システムとして捉え
光合成・物質生産に関わるエネルギー・物質変換機能分子の解明と
その制御から翻訳調節や代謝調節に関与するRNA分子機能を含めた転写後調節機能に至るまで
ゲノム科学を基盤とする研究手法と研究で得られた知見を中心に学習します。
また、さまざまな環境シグナル情報統御機構の具体例を示し、染色体構造変化・遺伝子発現制御を介して
細胞分裂・分化、発生を調節し、新たな環境に適応した器官・個体を再構築する過程についても学習します。

行動制御科学分野
感覚統合、運動発現、学習・記憶・動機づけなどを含む
動物行動の制御にかかわる神経系の働きは、個体レベルの行動と密接に連関します。
ニューロンや神経回路網の働きは、特に統合レベルでの解析が必要であり、解析には行動と関連づけながら進めなくてはなりません。
本分野では最新の分子生物学、生物物理学、神経内分泌学、神経システム生理学手法を用いた実験解析結果を体系的に学ぶとともに
解析結果に基づく神経系機能のシミュレーションによる再構成過程と、その生命科学研究における意義についても学習します。
動物は外的環境からの刺激を受けると,脳・神経系でどのように行動するかを判断して運動を企画し,行動を実行する。私たちの研究室では,コオロギの空気流刺激で誘発される回避行動をモデルに,行動解析・電気生理学・イメージング・数理解析を組み合わせて,刺激の受容から中枢での情報処理,運動制御にいたる神経回路とその情報処理内容の完全記述を目指している。
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小川宏人教授 |
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研究キーワード |
昆虫 ,脳,神経系,神経細胞,神経生理学,イメージング |
昆虫の脳「微小脳」の機能構築を明らかにし、哺乳類の脳との比較により脳の多様性、普遍性とその進化に迫ることを目指している。1つには、コオロギやゴキブリが示す高度な学習能力に着目し、その神経機構を分子、細胞およびシステムレベルで解析し、学習系の基本原理の解明に迫っている。
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水波誠教授 |
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研究キーワード |
脳、行動、学習、嗅覚、コオロギ、ゴキブリ |
動物行動の多様性に挑むには,メカニズムと機能の双方からの視点が必要ですが,特に当研究室では機能の側面に軸をおき,行動生態学的アプローチから鳴禽類を対象に研究をしています.社会行動(求愛,親子関係),発達,生活史,歌学習などに焦点をあて,社会的知能の進化をかんがえています.
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相馬雅代准教授 |
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研究キーワード |
鳴禽類,社会行動,発達,学習,求愛,認知,動物行動学,行動生態学 |
動物が生成する行動は、「遺伝」と「環境」の両方の要因の影響を受け、発達・獲得される。この遺伝と環境が具体的にどのようなタイミングでいかに脳内の遺伝子発現に影響を与えるのか?また発達過程の個体の行動そのものが脳内分子基盤にどのようにフィードバックされるのか?音声発声学習とその学習臨界期研究の動物モデルである鳴禽類ソングバードを用いて研究を進めている。
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和多和宏教授 |
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研究キーワード |
動物行動、遺伝子発現、学習・記憶、個体差、ソングバード、コミュニケーション、エピジェネティクス |

生殖発生科学分野
生殖細胞がどのような制御のもとで形成され
受精後、いかに新たな個体を作り出すかを解明することは、生命科学に課せられた基本命題の一つです。
その応用は、人工受精、避妊、有用生物種の作出など、我々の生活に深く関係する種々の生殖操作に直結します。
生殖発生生物科学は、生命の連続性と多様性を保証する仕組みの探求という純粋科学的側面と
生殖・発生を人為的にコントロールする技術の開発という応用科学的側面を持ち
クローン動物や再生医療に代表されるように、社会的関心も高い学問分野です。
本分野では、生殖細胞の形成と成熟の基本機構、発生における細胞分裂と細胞分化の制御機構を学習します。
卵巣は、次世代へと卵を提供するという重要な役割を担っています。当研究室では、卵巣の機能に関連する未解明の問題に取り組んでおり、マウスやメダカ、ゼブラフィシュを用いて、卵(子)形成や排卵、排卵後組織修復機構の仕組みについて解析を行っています。
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荻原克益准教授 |
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研究キーワード |
卵巣、卵(子)形成、卵胞選択、排卵、組織修復 |
ステロイドホルモンは脊椎動物における生体内の生理的な応答を調節することによって恒常性維持に寄与しています。そのステロイドホルモンはリガンドによって活性化する転写因子である核内受容体と結合する事で生理機能を発揮します。私たちの研究グループは核内受容体の分子進化と機能進化について多くの生物種を用いて調べています。さらに、温度によって性が決まる爬虫類の性決定・分化機構の解析、医薬品を含む内分泌かく乱化学物質の生物影響についても解析を進めています。
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勝義直教授 |
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研究キーワード |
内分泌学、ステロイドホルモン、核内受容体、性決定・性分化、内分泌かく乱物質 |
生物のオスとメスはどのように決まるのか?当研究室では、鳥類や哺乳類の性決定メカニズム、クロマチン制御、受精機構を、遺伝子、タンパク質、ホルモン、染色体レベルで研究している。また、ニワトリ、ウズラ、エミューなどの鳥類初期胚を用いて、トランスジェニック、ゲノム編集、生命工学的技術を駆使し、様々な遺伝子の機能解明を試みている。また、哺乳類でありながらY染色体をもたない、世界的にも極めてめずらしいトゲネズミ属を用いて、新しい性決定遺伝子の探索やY染色体消失の解明を目指している。
研究キーワード |
性決定、ヘテロクロマチン、EC細胞、受精、遺伝子、Y染色体、鳥類、哺乳類、生殖発生学、分子生物学 |
高等生物においてゲノムの大部分は遺伝子ではない領域で、多くの場合このような領域は遺伝子の発現を調節する機能を持っており、タンパク質に翻訳されない非コードRNAとして転写される領域も多いです。私たちの研究室ではゲノム機能の解明を目指して研究を行っており、特に生殖における多機能性ゲノムと長鎖非コードRNAについて解析しています。
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木村敦教授 |
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研究キーワード |
分子生物学、生殖生物学、遺伝子発現調節、エピジェネティクス、長鎖非コードRNA、多機能性ゲノム、精子形成、卵巣、胎盤、プロテアーゼ |
私たちの体は受精した一つの卵から始まり、形態形成を繰り返す事で形作られる。この体づくりの仕組みは受精前の卵母細胞にすでに準備されていて、精子と受精する事で一連の反応が開始される。本研究室では小型熱帯魚のゼブラフィッシュと哺乳類のマウスを用い、卵母細胞に構築された生命の始まりと発生を進行させる仕組みの解明を目指している。具体的には、卵母細胞に蓄積された母性因子の役割を解明すること、さらにその制御・作用機構を明らかにすることである。
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小谷友也准教授 |
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研究キーワード |
脊椎動物、卵母細胞、卵、初期発生、母性因子、細胞生物学、分子生物学、分子遺伝学 |
ゲノムプロジェクトの遂行と次世代シークエンサーの利用により、生物科学の研究方法が多いに変化している。ヒトを含む哺乳動物の遺伝子数はたかだか2万強であることが明らかにされたものの、遺伝子機能についての解析はこれからの課題である。われわれは、種々の遺伝子改変マウスやラットを作出して、ヒト疾患に関与する遺伝子の機能を検討しています。
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北田一博准教授 |
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研究キーワード |
疾患モデル、遺伝子改変、ラット、マウス |