北海道大学 大学院 生命科学院
北海道大学 大学院 生命科学院

記事詳細

記事詳細

光合成装置の巨大な複合体の存在が明らかに

光合成とは光エネルギーを利用して糖を合成する一連の反応です。この光合成産物の糖は地球上ほぼ全ての生命活動を支えており,近年は光合成を改変して農業やバイオマスの生産に貢献しようとする試みが注目を集めています。さらに植物の行う光合成は,二酸化炭素を吸収して酸素を放出することから,地球環境を大きく変える力を持っています。

光合成において中心的な役割を担っている光エネルギー変換装置が光化学系です。植物には2種類 の光化学系(光化学系Iと光化学系Ⅱ)が存在し,それらは協調的に働きます。2 種類の光化学系が協調することで,地球に大量に存在する水を原材料にして光合成を行うことが可能になりました。これは二つの電池が直列に繋がれているのに似ています。ただし電子は2種類の光化学系の間を物質拡散によってゆっくり移動するため,2種類の光化学系の駆動バランスが崩れると,光化学系は壊れてしまいます。そのため,それぞれの光化学系を駆動するエネルギーの分配と制御 がとても重要です。光合成に必須な2つの光化学系が発見されてから 50 年以上の間,2つの光化学系は独立して存在しているとされてきましたが,2つの光化学系を協調的に働かせる仕組みはよくわかっていませんでした。

北海道大学生命科学院の横野牧生研究員、田中歩教授らのグループと神戸大学の秋本誠志教授らによる共同研究グループは,超複合体を分離する電気泳動法とエネルギーの移動を調べる時間分解蛍光分光法を改良して組み合わせることで,これまで知られていなかった光化学系の構造の解明を目指しました。 2種類の光化学系が超複合体を形成し,その中でエネルギーが行き交うことで自動的にバランスがとられることを解明しました。さらに,この超複合体がストレス回避や光合成の調節に重要な役割を果たすことを示しました。従来の基礎研究や応用研究では,2つの光化学系が独立して存在することが前提となってきました。 今回,超複合体の存在が明らかになったので,環境適応や調節,進化,応用など光合成の様々な分野で新しい発展が期待されます。

研究論文名:A megacomplex composed of both photosystem reaction centres in higher plants(高等植物には2種類の光化学系が結合した超複合体が存在する)

著者:横野牧生(北海道大学低温科学研究所),高林厚史(北海道大学低温科学研究所),秋本誠志(神戸大学分子フォトサイエンス研究センター),田中 歩(北海道大学低温科学研究所)

公表雑誌:Nature Communications

公表日:日本時間(現地時間) 2015 年 3 月 26 日(木)午後 7 時(英国時間 2015 年 3 月 26 日午前 10 時)

Yokono_2015_0330

20150326 プレスリリース ダウンロード

 


Copyright(C) Hokkaido University All right reserved.