北海道大学 大学院 生命科学院
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マユの構成成分が生産される仕組みを解明 -カイコによる有用タンパク質生産を向上させる技術の開発へ

2016_02_15_Takitani

(研究概要)
遺伝子組換えカイコを利用することで、化粧品などの原料となるヒトコラーゲンなどの有用タンパク質を水に溶ける形で高純度に生産する技術は既に実用化され ていますが、この技術においては、有用タンパク質をいかに大量に、水に溶ける糊状の絹タンパク質(セリシン)と一緒に生産させるかが肝要です。

北海道大学生命科学研究科生命システム科学コースの滝谷重治准教授の研究グループでは、農業生物資源研究所(生物研)との共同研究において、カイコのマユの絹タンパク質のうち、水溶性のセリシンが局所的に生産される仕組みを解明しました。

具体的には、アンテナペディアというタンパク質がセリシン遺伝子を活性化することにより、セリシンタンパク質をマユを作る時期にのみ局所的に大量に生産することが明らかになりました。さらに、アンテナペディアを活性化することで、通常セリシンが生産されない部位においてもセリシンを生産することが可能になりました。

アンテナペディアはセリシン遺伝子を活性化するのみならず、他の複数のタンパク質をコードする遺伝子群も活性化することも同時に明らかになりました。また、それらアンテナペディアによって活性化される遺伝子群には共通する塩基配列が存在していました。

今後、今回明らかとなった仕組みを利用し、有用タンパク質遺伝子をアンテナペディアによって強く働かせることで、カイコによる有用タンパク質の生産性を向上させることが可能になると期待されます。

 

(研究論文)
研究論文名:A Hox gene Antennapedia regulates expression of multiple major silk protein genes in the silkworm Bombyx mori. (Hox 因子Antp はカイコの複数の主要な絹糸タンパク質遺伝子の発現を制御する)
著者:Tsubota T, Tomita S, Uchino K, Kimoto M, Takiya S, Kajiwara H, Yamazaki T, Sezutsu H
公表雑誌:The Journal of Biological Chemistry( http://www.jbc.org/content/early/2016/01/26/jbc.M115.699819.abstract

 

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