北海道大学 大学院 生命科学院
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光学顕微鏡を用いた分子の回転ダイナミクス解析によってタンパク質の形状と配向を生きている細胞内で推定できることを発見 -神経変性タンパク質研究への応用の道を拓く-

北海道大学(総長:山口 佳三)の金城 政孝教授らは,溶液および細胞内部のタンパク質の回転拡散[1]を計測することに成功しました。
従来の蛍光顕微鏡にカメラの代わりに開発した装置を接続するという簡便な手法を用いることにより,従来方法では得られなかったブラウン運動によるランダムな分子の回転の速さ「回転拡散係数」を測定することができます。回転拡散は分子のサイズ変化を敏感に感知するため分子の多量体化の検出に有用であると考えられていますが,この手法を用いた研究はほとんど行われていません。今回,検出器を複数用いる手法を用いることで,従来は検出器によるノイズに隠されて測定が難しかった数十ナノ秒程度の時間領域で緩和される回転拡散まで検出することに成功し,緑色蛍光タンパク質EGFP[2]の詳細な回転拡散の測定に初めて成功しました。回転拡散と並進拡散の比較から,分子半径を算出しました。この回転拡散は粘性を変化させると理論通りに変化したため,測定の正確さが実証されました。また,多量体タンパク質の測定から,この手法を用いた回転拡散計測がタンパク質等分子の構造や配向を細胞内で測定することができることが示唆され,シミュレーションにより裏付けられました。この成果は,今回提案する手法が構造生物学や分子分光学において簡便かつ生体内での測定ができる技術として非常に有力なものとなりうることを示しています。
本研究の全ての成果は,北海道大学大学院先端生命科学研究院細胞機能科学研究室において,大浦 真生命科学院修士課程2年生および山本 条太郎特任助教を中心とした研究チームにより当該研究室において行われたものであり,Scientific Reports誌に掲載されました。
今後の研究では,今回の手法を用いて神経変性疾患などに関連し,オリゴマー化をひきおこし疾患を発生させるタンパク質の凝集体形成の細胞内観察など,幅広い応用の可能性を探索してまいります。

[1] 回転拡散
分子の角度分布が平均化される拡散現象。非常に高速に生じる。
[2] 緑色蛍光タンパク質(EGFP)
オワンクラゲ由来の緑色の蛍光を発するタンパク質。

開発した顕微鏡

光学顕微鏡を用いた分子の回転ダイナミクス解析によってタンパク質の形状と配向を生きている細胞内で推定できることを発見
-神経変性タンパク質研究への応用の道を拓く-
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