北海道大学 大学院 生命科学院
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植物の老化や紅葉には,バクテリアの遺伝子が関わっていた ~酵素の本来の役割とは異なる触媒活性が新しい代謝系の誕生に重要であることを解明~

北海道大学低温科学研究所の伊藤寿助教,北海道大学大学院生命科学院博士後期課程の小畑大地氏らの研究チームは,植物の祖先がバクテリアから酵素を獲得し,それを利用してクロロフィルの分解系を作ったことを解明しました。
植物の光合成に関わるクロロフィルはマグネシウムを中心金属として持っています。クロロフィルの分解は,このマグネシウムがマグネシウム脱離酵素により外されることにより始まります。この反応は植物の老化や紅葉に中心的な役割を果たしています。興味深いことに,植物のマグネシウム脱離酵素と似たタンパク質がクロロフィルを持たないバクテリアに見つかったことから,その酵素活性を調べたところ,クロロフィルのマグネシウムを脱離する活性を持ち,植物の酵素より高い活性を示すことがわかりました。ただし,この酵素はバクテリアの中ではクロロフィル分解には関わらず,本来は別の働きをしていると予想されます。また,分子系統解析の結果,植物の祖先がバクテリアからこの酵素を遺伝子の水平伝播*1によって獲得したことがわかりました。
これらの結果はバクテリアの酵素が偶然クロロフィルを分解する活性を持ち,それが植物に取り込まれることによって植物はクロロフィルを分解できるようになったことを示しています。この成果は新しい酵素や代謝系の獲得機構の解明に貢献すると期待されます。
本研究成果は,協定世界時間2019年9月5日(木)午後9時公開のMolecular Biology and Evolution誌に掲載されました。
なお,本研究は新学術領域(16H06554),特別研究員奨励費(18J20898)等の支援を受けて行われました。

(研究論文)

論文名 Horizontal transfer of promiscuous activity from non-photosynthetic bacteria contributed to evolution of chlorophyll degradation pathway(非光合成型バクテリアからの,本来とは異なる酵素活性の水平伝播がクロロフィル分解系の進化に貢献した)
著者名 1小畑大地,2高林厚史,2田中亮一,2田中歩,2伊藤寿(1北海道大学大学院生命科学院,2北海道大学低温科学研究所)
雑誌名 Molecular Biology and Evolution(進化生物学の専門誌)
DOI 10.1093/molbev/msz193
公表日 日本時間2019年9月6日(金)午前6時(協定世界時間2019年9月5日(木)午後9時)(オンライン公開)

2019/9/6 プレスリリース ダウンロード

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