北海道大学 大学院 生命科学院
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ナノ粒子を用いた複合がん免疫療法の開発に成功~免疫チェックポイント阻害剤抵抗性がんの治療法として期待~

ナノ粒子を用いた複合がん免疫療法の開発に成功~免疫チェックポイント阻害剤抵抗性がんの治療法として期待~

北海道大学大学院薬学研究院の中村孝司助教,同生命科学院修士課程の佐藤孝紀氏(当時),同薬学研究院の原島秀吉教授らの研究グループは,免疫チェックポイント阻害剤であるprogrammed cell death 1(PD-1)抗体に治療抵抗性を示すマウスメラノーマ肺転移モデルに対し,がん免疫を活性化させるアジュバントを搭載したナノ粒子を併用することで治療抵抗性の改善と相乗的な抗腫瘍活性を誘導することに成功しました。

ポイント

●がん免疫を活性化するナノ粒子の併用で,PD-1抗体に対する治療抵抗性の克服に成功。
●ナノ粒子により腫瘍微小環境の免疫状態が変化し,PD-1抗体が薬効を発揮したことを解明。
●PD-1抗体に治療抵抗性を示すがんに対する複合がん免疫療法の進展に期待。

研究成果の概要

免疫チェックポイント阻害剤の登場はがん治療に革命をもたらしましたが,臨床で使用されている免疫チェックポイント阻害剤は,一部のがん患者にしか薬効を示しません。免疫チェックポイント阻害剤に治療抵抗性を示すがんの多くは,がんに対する免疫応答が不十分です。そこで研究グループは,がん免疫を効率的に活性化するナノ粒子を開発し,このナノ粒子とPD-1抗体との複合がん免疫療法の有用性を検証しました。マウスメラノーマ肺転移モデルは,PD-1抗体のみでは全く治療効果を示しませんが,ナノ粒子と併用することで相乗的な治療効果が発揮され,腫瘍コロニーの増加を顕著に抑制することができました。ナノ粒子は肝臓マクロファージを活性化してI型インターフェロンを産生することにより全身のナチュラルキラー(NK)細胞を活性化します。その結果,腫瘍微小環境の免疫が活性化状態へと移行し,PD-1抗体の薬効が発揮されたことを見出しました。

本研究成果は,NK細胞の活性化を軸とした複合がん免疫療法としてPD-1抗体に治療抵抗性を示すがんに対する治療に貢献できると期待されます。

本研究成果は,2021年7月2日(金)公開のJournal for ImmunoTherapy of Cancer誌に掲載されました。

本研究成果は,北大プレスリリース(https://www.hokudai.ac.jp/news/2021/07/post-872.html)にも掲載されていますので,より詳しい内容はそちらの記事もご覧下さい。

 


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