北海道大学 大学院 生命科学院
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“エッジの効いた”マイマイガトラップ開発に成功~休憩施設への飛来虫防止に期待~

“エッジの効いた”マイマイガトラップ開発に成功~休憩施設への飛来虫防止に期待~

北海道大学電子科学研究所の西野浩史助教及び堂前愛学術研究員らの研究グループは,大手建設業者と共同で、大型のガ(マイマイガなど)を優先的に捕獲し,他の昆虫はなるべく逃がす環境低負荷型のライトトラップを開発しました。
北海道の森林面積は広く,短い夏の間に森林昆虫が大量発生します。特に,広葉樹を食害するマイマイガやクスサンは翼長 6~10 cm と大きく,休憩施設の人工光源に飛来・定着するため,利用者の苦情のもとになってきました。そこで,休憩施設への大型のガのよりつきを減らす狙いで,誘引性の高いライトトラップを作成することを目的としました。これまで,光波長(色)嗜好性に着目したトラップは多く作成されてきましたが,光源照射角や捕獲部分の形状にまで工夫を凝らしたトラップは少ないのが現状でした。
本研究のハイライトは, 狭角光源だとコントラストがつきやすいので, ガが寄りやすく、光源の背景(衝突板)に夜光塗料を塗ると光源の境界が不明瞭となるため, 逆に寄りにくくなる、という発見にあります。コリメーターレンズで照射角を絞った狭角光源(10度)は広角光源(40度)の5倍以上のマイマイガを集めました(図1)。実際に,マイマイガは視覚的コントラストの強いオブジェクトや林縁に定位する習性を持ちます。
そこで, トラップの光源として,大型のガの誘引効果が最も高い発光ダイオード(380 nm+490 nm)を実装するとともにその光源は狭角仕様(10度)としました。大型のガは光源背後の衝突板に当たると,自重により,返し付きの容器に落下しますが(図1),小さな昆虫は逃げることができます。また,電源はソーラーパネルによる発電により,夏季の2ヶ月にわたる連続使用が可能でした(図2)。
マイマイガの人工照明への飛来, 施設への定着は全国的な問題となっており,本トラップが実用化されれば,マイマイガ防除の一助となることが期待されます。

本研究成果について、北大プレスリリース(https://www.hokudai.ac.jp/news/2022/05/post-1044.html)にも掲載されております。ぜひ併せてご覧下さい。

論文情報

論文名 Management of nuisance macromoths in expressways through academic-industrial collaboration: light trap designed on the basis of moths’ preferences for light attributes.
著者名 Keigo Kurihara1, Toshiaki Ito1, Yukihisa Sato1, Takanori Uesugi2, Satoru Yamauchi1, Masahiro Komatsu2, Susumu Saito2, Mana Domae3, Hiroshi Nishino31ネクスコエンジニアリング北海道,2東日本高速道路株式会社,北海道支社,技術企画課,3北海道大学電子科学研究所)
雑誌名 Zoological Science(動物学の専門誌)
DOI 10.2108/zs210082

図1.広角光源(40度)と狭角光源(10度)で大型のガが集まる仕組みのイメージ(上段)
実地試験では狭角光源の方が5倍以上のマイマイガがトラップにかかった(下段)

図2.トラップで捕獲された昆虫をチェックする様子。トラップは十分な耐久性を有しており、2018年の連続台風(台風20号・21号)直撃,北海道胆振東部地震 (9/6)でも損傷はなかった。


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