効率的な環状ペプチドの化学-酵素ハイブリッド合成法を開発～環境調和性の高い環状ペプチド製造法の発展に期待～（薬学研究院　教授　脇本敏幸、講師　松田研一）

ポイント

●ペプチド化学合成と酵素による環化反応をシームレスに行う環状ペプチド合成法を開発。
●野生型酵素の探索と論理的な酵素改変により、合成できる環状ペプチドの多様性を拡張。
●非リボソームペプチド環化酵素を生体触媒として応用する開発研究の加速に期待。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の脇本敏幸教授及び松田研一講師の研究グループは、非リボソームペプチド環化酵素を用いて環状ペプチドを効率的に合成する化学-酵素法を開発しました。

ペプチドの環化反応は多量体化反応と競合する難度の高い反応であり、なかでも組織移行性に優れる10残基程度以下の短いペプチドの環化は、有機合成的にも酵素的にも困難です。一方、これまで研究グループは新しいタンパク質ファミリーの非リボソームペプチド環化酵素を世界に先駆けて発見し、その詳細な機能解析を行ってきました。本研究では、これまでボトルネックとなっていた煩雑な基質合成法を改良し、ペプチド固相合成と酵素による環化反応をシームレスに実施できる環状ペプチドの化学-酵素合成法を確立しました。さらに、野生型酵素の探索や論理的な酵素触媒の改変により、合成できる環状ペプチドの多様性を拡張しました。

今回開発した方法は、環境調和性の高い環状ペプチド製造に向けた技術基盤を提供します。また多数の基質を簡便に調製可能となったことから、今後、非リボソームペプチド環化酵素を生体触媒として応用する開発研究が一層加速することが期待されます。

なお、本研究成果は、2023年1月13日（金）公開のJournal of the American Chemical Society誌にオンライン掲載されました。

論文名：Streamlined Chemoenzymatic Synthesis of Cyclic Peptides by Non-ribosomal Peptide Cyclase（非リボソームペプチドによる環状ペプチドの効率的な化学-酵素合成）
URL：https://doi.org/10.1021/jacs.2c11082

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ペプチド固相合成と酵素環化反応をシームレスに繋ぐ環状ペプチド合成法