北海道大学 大学院 生命科学院
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記事詳細

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T細胞を標的とした新たな阻害剤を開発~自己免疫疾患の新たな治療薬開発への応用に期待~(薬学研究院 教授 松田 正)

ポイント

●免疫応答を担うT細胞内のSTAP-2と呼ばれるタンパク質を標的とする新規阻害剤の開発。
●本阻害剤の処理によるT細胞活性化と自己免疫疾患の増悪化抑制。
●新たな自己免疫疾患の新規治療薬開発に期待。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の佐々木悠斗研究員、松田 正教授及び北海道科学大学の柏倉淳一教授らの研究グループは、アダプター分子であるSTAP-2を標的とした新たなT細胞阻害剤を開発し、本阻害剤が自己免疫疾患の病態を抑制する作用があることを見出しました。

通常ではヒトの体内に病原体が侵入した場合、免疫担当細胞が担う生体防御反応により排除されます。この反応にはT細胞が主要な役割を果たしており、T細胞の機能はT細胞受容体(TCR、T cell receptor)下流の信号伝達機構により、厳密に制御されています。何らかの原因によるT細胞異常活性化は自己免疫疾患の発症や重症化の原因であることから、TCRを介した信号伝達機構の解明及び制御が、免疫疾患を制御するためには重要です。

研究グループは以前、その信号伝達にはSTAP-2が重要な役割を果たすことを解明し、STAP-2がTCRを構成するタンパク質CD3ζと直接結合してその働きを強めることにより、T細胞活性化を促進することを見出しています。今回の研究ではその発見を応用し、STAP-2/CD3ζの結合阻害によってT細胞の機能を抑制するコンセプトのもと本阻害ペプチドを開発しました。その阻害ペプチドによってT細胞の機能が実際に抑制され、自己免疫疾患の病態も軽減されました。本阻害ペプチドをさらに最適化し、臨床への応用を進めることで、自己免疫疾患の新たな治療薬の開発が期待できます。

なお、本研究成果は、雑誌The Journal of Immunologyで2023年7月7日にオンライン公開されました。

論文名:STAP-2-derived peptide suppresses T cell receptor-mediated signals to initiate immune responses (STAP-2由来のペプチドはT細胞受容体を介した免疫反応を抑制する)
URL:https://doi.org/10.4049/jimmunol.2200942

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本研究による新たな自己免疫疾患治療戦略


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