北海道大学 大学院 生命科学院
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高速な細胞内分子クラウディングセンサーの開発に成功 ~高浸透圧ストレス下における分子クラウディング状態変化の解明に期待~(先端生命科学研究院・講師・北村 朗)

北海道大学大学院先端生命科学研究院の北村朗講師(AMED-PRIME研究者)とスウェーデン・カロリンスカ研究所臨床神経科学部門Vladana Vukojević准教授らとの国際共同研究グループは,単量体緑色蛍光タンパク質の蛍光寿命測定により高浸透圧ストレス時の細胞内分子クラウディング状態の変化を検出できることを明らかにしました.

ポイント
・高浸透圧ストレス下における細胞内分子クラウディング状態変化のリアルタイム計測に成功。
・核質内と細胞質内のわずかな分子クラウディング度の違いが測定可能なことを実証。
・細胞内クラウディングの迅速状態変化測定などの進展に期待。

概要
北海道大学大学院先端生命科学研究院の北村 朗講師らの研究グループは、単量体緑色蛍光タンパク質 (以下 eGFP)の蛍光寿命測定を用いて迅速・高感度で高浸透圧ストレス下における細胞内分子クラウディング状態変化測定系の開発に成功しました。本成果は、スウェーデン・カロリンスカ研究所臨床神経科学部門のヴラダナ ヴコジェビク准教授らとの国際共同研究によるものです。

細胞が高塩濃度などの環境にさらされると、細胞内の水分子が細胞外へ漏出し、細胞内のタンパク質など生体分子濃度が高くなります。このような状態は分子クラウディング(分子こみあい)の上昇と言われ、特に細胞内のようにもともと分子クラウディング度が高い分子が高密度に存在する空間においては様々な細胞内容物の構造や集積状態の変化を産み出すことが知られています。

本研究では、生きている細胞内において eGFPの蛍光寿命を、カロリンスカ研究所にて独自に開発された蛍光寿命イメージング装置を用いて二次元空間的に測定することで、高浸透圧ストレス下における細胞内分子クラウディング度がストレス直後に最大となり、その後下降するがストレス前の状態には戻らず安定状態になることを示しました。また、この分子クラウディング状態の応答変化は、従来型のクラウディング蛍光センサーよりも高速に検出できることが分かりました。

本研究により開発された測定系は今後、様々な細胞内分子クラウディング上昇を伴う変化の解析に応用可能であると考えられます。また未開な細胞内分子クラウディングの全貌を解明するための重要なツールとなることが期待されます。

なお、本研究成果は、2023年7月22日(土)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。

論文名:Increased intracellular crowding during hyperosmotic stress (高塩濃度ストレス下における細胞内高分子こみあい度の上昇)
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-023-39090-w

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蛍光寿命の長短の意味と分子クラウディング状態の関係を表した図。
蛍光寿命が長いとは、蛍光分子が励起されてから蛍光を発するまでの時間が相対的に長く(上)、逆に蛍光寿命が短いとは、蛍光分子が励起されてから蛍光を発するまでの時間が相対的に短いこと(下)を意味する。また、この蛍光寿命は細胞内分子クラウディングの状態を反映する。

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