北海道大学 大学院 生命科学院
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記事詳細

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細胞外膜小胞を介した異種細菌間コミュニケーションが細菌の二次代謝産物生産を誘導~通常の細菌培養では生産されない未開拓な天然物の獲得に期待~(薬学研究院 教授 脇本敏幸、助教 吉村 彩)

ポイント

●細菌が分泌する細胞外膜小胞が多様な種類の細菌に対して様々な化合物を生産誘導することを解明。
●細胞外膜小胞と化合物を介して、異種細菌が競争的に相互作用することが明らかに。
●通常の細菌培養では生産されない、未開拓な化合物の獲得に期待。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の吉村 彩助教、脇本敏幸教授と、帯広畜産大学グローバルアグロメディシン研究センター及び同大学原虫病研究センターの菅沼啓輔助教の研究グループは、細胞外膜小胞(MVs)を介した異種細菌間コミュニケーションが、細菌の二次代謝産物生産を誘導することを明らかにしました。

細菌由来の二次代謝産物(天然物)は細菌ゲノム上の生合成遺伝子を設計図として生合成されます。生合成遺伝子の80%以上は、研究室培養条件では発現しない休眠遺伝子ですが、細菌の本来の生育環境では外部刺激に応じて発現すると考えられています。自然環境中で細菌が受ける刺激の一つとして異種細菌が放出するMVsが知られています。そこで研究グループは、MVsを用いて自然環境を模倣した条件で細菌を培養することで休眠遺伝子を活性化する方法を検討しました。

その結果、様々な細菌がMVsによって多様な天然物を生産誘導することを明らかにしました。さらに、2種の細菌がMVsと天然物を利用して、競争的に相互作用することを示しました。今後はMVsと細菌の多様な組み合わせを本手法に適用することで、さらなる有用天然物の獲得が期待できます。

なお、本研究成果は2023年7月14日(金)公開のAngewandte Chemie International Edition誌にオンライン掲載されました。

論文名:Membrane-Vesicles-Mediated Interbacterial Communication Activates Silent Secondary Metabolite Production(細胞外膜小胞を介した異種細菌間コミュニケーションが二次代謝産物生産を活性化する)
URL:https://doi.org/10.1002/anie.202307304

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細胞外膜小胞によって生産誘導される新規天然物


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