新たな脂肪分化制御メカニズムを解明~糖尿病の新たな治療薬開発への応用に期待~(薬学研究院 教授 松田 正)
2024年3月13日
ポイント
●インスリン受容体信号伝達におけるSTAP-2と呼ばれるタンパク質の新たな役割を発見。
●STAP-2は脂肪前駆細胞の脂肪分化を促進。
●STAP-2欠損マウスでは高脂肪食給餌による体重増加量が低下。
概要
北海道大学大学院薬学研究院の松田 正教授及び京都薬科大学の関根勇一講師らの研究グループは、アダプター分子であるSTAP-2が、インスリンの働きに作用し、脂肪細胞分化と高脂肪食による体重増加に関与することを見出しました。
インスリンは細胞表面のインスリン受容体に結合し、血中ブドウ糖濃度の調節や脂肪分化を担い、肥満による糖尿病発症にも深く関与しています。
細胞内信号伝達において、リン酸化酵素を始めとする酵素群や転写因子の活性化を制御するアダプター分子の一つであるSignal-transducing adaptor protein-2(STAP-2)は、インスリン信号伝達経路を構成するタンパク質と直接結合してその働きを強めることにより、脂肪細胞分化を促進しました。また、STAP-2の発現量により高脂肪食による体重増加が左右されたことが分かりました。そのため、STAP-2の発現量や働きを制御することにより、糖尿病の新しい薬の開発が期待できます。
なお、本研究成果は、2024年3月9日(土)公開のScientific Reportsにオンライン掲載されました。
論文名:STAP-2 facilitates insulin signaling through binding to CAP/c-Cbl and regulates adipocyte differentiation(STAP-2はCAP/c-Cbl との会合することにより、インスリン受容体シグナル伝達を促進し、脂肪細胞分化を制御する)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-024-56533-0
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本研究成果により期待される、新たな糖尿病治療戦略