ナノカプセルでミトコンドリアのゲノム編集に成功~ミトコンドリア遺伝子疾患治療に向けた新規技術の開発~(薬学研究院 教授 山田勇磨)
北海道大学大学院薬学研究院の山田勇磨教授、同大学院薬学研究院修士課程の野呂田楓氏(研究当時)、リューベック大学(ドイツ)の廣瀬みさ主任研究者らの共同研究グループは、ミトコンドリア標的型ナノカプセル(MITO-Porter)を用いてCRISPR/Cas9ゲノム編集装置(RNP)を哺乳類細胞のミトコンドリア内に直接送達し、特定の遺伝子変異を標的としたミトコンドリアDNA(mtDNA)のゲノム編集に成功しました。
ミトコンドリアDNAの変異は、様々な難治性疾患の原因となることが知られていますが、その二重膜構造がゲノム編集装置の導入を困難にしてきました。本研究では、独自開発したMITO-PorterにCRISPR/Cas9の複合体を搭載し、哺乳類細胞のミトコンドリア内へ直接送り込むことに初めて成功しました。
研究グループはまずマイクロ流体デバイスを用いてナノカプセルを調製し、これにより均一かつ再現性の高いナノ粒子製剤を作成しました。次に、このナノカプセルをミトコンドリア変異細胞モデルに適用し、mtDNA内の特定変異(m.7778G>T)部位のゲノム特異的切断を実現しました。さらに、ヒト細胞(HeLa細胞)においても同様の成功を確認しました。
本研究成果は、ミトコンドリア遺伝子疾患の根治的治療法開発に貢献し、安全かつ効果的なゲノム編集技術の臨床応用に向けた重要な一歩となります。
なお、本研究成果は、2025年6月19日(木)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。
論文名:Lipid nanoparticle delivery of the CRISPR/Cas9 system directly into the mitochondria of cells carrying m.7778G>T mutation in mtDNA (mt-Atp8)(ミトコンドリアDNA(mt-Atp8)にm.7778G>T変異を有する細胞のミトコンドリアへCRISPR/Cas9システムを直接送達する革新的な脂質ナノカプセル)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-025-03671-8

北海道大学HPへのリンク
https://www.hokudai.ac.jp/news/2025/06/post-1929.html