生命科学院長からのメッセージ
現在,全世界で深刻な問題となっている「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)」のパンデミックは,PCRによる診断,メッセンジャーRNAを利用した新しいタイプのワクチンの開発も含め,生命科学研究の重要性とその発展が人類社会にもたらす恩恵を,改めて私達に認識させたのではないかと思います。生命科学研究の更なる深化と発展には,特に研究領域の異なる分野間での融合が鍵であり,実際に異分野間の融合によって新しい学問領域が次々と生まれています。一方,それらを支える人材の育成も重要であり,生命科学の教育・研究環境も変化・進化していく必要があります。この社会的要請に応えるため,北海道大学では2006年度に,部局の壁を超えた融合型組織,生命科学院・生命科学専攻を新設し,新しい生命科学の大学院教育を開始しました。また,2012年度には,高度な医療に対応できる臨床薬学研究の研究者や医療現場でリーダーとして活躍できる指導的薬剤師の養成を目的として「臨床薬学専攻(4年制博士課程)」を設置し,さらに2018年度には,医療,環境・エネルギー等の分野で先端基盤材料として注目を集めている「ソフトマター」に関する教育・研究を強力に推進し,最先端のソフトマター研究を世界的にリードできる人材の養成をめざし,「ソフトマター専攻」を設置しました。
生命科学専攻では,履修上の区分として3つのコース(生命融合科学コース,生命システム科学コース,生命医薬科学コース)を設け,それぞれのコースが得意とする学問領域において専門性を高める教育を行っています。また,生命科学専攻全体として,以下に示すような特徴的な教育システムを採用しています。
1)4学期制および複数指導教員制の導入
2)コース内やコース間を横断した講義の履修による幅広い知識・研究技能の修得
3)生命倫理,知的財産,バイオインフォマティクス,分子イメージングなど,社会的要請の高い新興学問領域に関する授業の提供
4)グローバル社会で活躍するために必須の英語でのコミュニケーション・プレゼンテーション法や英語論文作成法に関する授業の提供
生命科学院の教育目標は,上記のような特色ある教育を通じて,先端的・融合的な生命科学研究を先導し,グローバルに活躍できる研究者・技術者を養成することです。そのためには,①課題を解決するために必要な確かな知識や技術の修得,②自分が得た実験データや他の研究者が報告しているデータを客観的に分析・解釈できる力,③他の研究者と高度なレベルで討論ができるコミュニケーション能力,④研究成果を正確,明解,簡潔に公表できる発信力,などが必要になります。生命科学院ではこれらの能力が身につくよう,様々な授業や機会を提供しています。生命科学院における講義,演習,実験実習などを通じて,研究者・技術者に必要な総合力を身につけてほしいと願っています。
このような生命科学院の教育目標を理解し,大学院での授業や研究に主体的・自律的に取り組む意欲を持つ学生を,生命科学院では積極的に募集しています。
北海道大学 大学院 生命科学院長
佐藤 美洋